平穏な日常生活を送るためには、損害保険はなくてはならないものであり、ほとんどの人が自動車保険や火災保険などの損害保険に入っています。
損害保険に入るときに補償内容を確認しているはずですが、事故などが起こって補償を受けるときに損害保険会社との間でトラブルが生じることがあります。
その際に、損害保険会社に対する苦情を訴えたいけれど、どこに申立てを行えばよいのかわからないという人も少なくないことでしょう。
今回は、損害保険会社に対する苦情の申立てに関し、基本的なことから効果的な申立てのやり方まで、皆さんがよく理解できるようにわかりやすくお伝えしていきます。
金融庁への苦情・相談の状況
損害保険会社の監督官庁である金融庁には、多くの苦情・相談が寄せられています。
平成26年4月1日~6月30日において保険商品全体の相談件数2,977件のうち、損害保険会社に関する件数:1,588件(53%の割合)であり、生命保険会社に関する件数:651件(22%の割合)などと比べても圧倒的に多い相談があります。
また、損害保険会社に関する件数:1,588件のうち、個別取引・契約の結果に関する件数1,078件(68%の割合)であり、大半の相談内容が個別取引・契約の結果に関する相談となっています。
このことから、損害保険会社に関する個別取引・契約の結果に関する相談が大きな問題となっていることがわかります。
実際の苦情や相談の内容としては、保険金の支払いを拒否されたり、損害保険商品の内容についての説明が不十分なまま加入させられたりなどのトラブルを訴える声が多いようです。
損害保険会社の不祥事
2005年に損害保険会社16社による総額84億円の保険金不払い事件があり、損害保険ジャパン(株)と三井住友海上火災保険(株)に対して行政処分が行われました。
この事件をきっかけにして、金融庁は保険不払いに対する取締りを厳しくしたり、相談窓口を設けて損害保険会社に対する苦情・相談を行っていますが、損害保険会社に対する苦情・相談は一向に減らない状況にあります。
どこに申立てすれば良いか?
損害保険会社に対する苦情の申立てを行う前に保険約款※1を読んで自分の主張したいことに矛盾がないかを確認しておく必要があります。
損害保険会社の担当者から事前に聞いていた話とは違う、といった理由などにより、トラブルになることがよく見受けられます。
損害保険は、保険契約者と損害保険会社との間で締結される契約により成り立っているため、損害保険会社の担当者が話したことよりも、保険約款に記載されている内容が優先して判断されることになります。
申立てを行う前にすべきこと
具体例を示して説明します。
事故で入院したときに、差額ベッド費用の保険金が出るということで、損害保険会社の担当者にも相談して、個室などの料金が高い病室に移動したとします。
ところが、保険約款では、差額ベッド費用の支払い限度額が設定されていたり、医師が診断して必要と判断した場合に限るという内容になっていたとします。
そうすると、費用の全額を補償されなかったり、1円も保険金が出ないことになります。
損害保険会社の担当者に了解してもらったから個室に移ったと主張しても、保険約款に記載されていることに基づいて判断されるため、こちらの主張が通ることはまずあり得ません。
損害保険会社の担当者の説明不足を主張しても、お詫びぐらいで何の解決にもならないと思った方が良いでしょう
保険の補償を受けるときには、損害保険会社の担当者に確認したから大丈夫ということではなく、保険約款の内容を確認することが必要です。
※注1:保険契約者と保険会社との間で締結された保険契約の内容や条件などを記載した文書のことをいいます。
損害保険会社の相談窓口に連絡
各損害保険会社は相談窓口を設けているので、苦情の申立てとして、加入している損害保険会社の相談窓口に連絡するができます。
損害保険に関するトラブルは保険契約者と損害保険会社の間で生じた誤解が原因の場合も少なくなく、相談窓口に相談することで解決することがあります。
損害保険会社の相談窓口に相談するときには、意見の相違点をはっきりと認識できるように納得いくまで説明を受けることが必要です。
その場で判断することが難しい場合には、頭の中を整理してから、後日、相談窓口に連絡し直すことも心がけて下さい。
2016年7月時点における
「(社)日本損害保険協会」の会員会社25社の相談窓口と、
「(社)外国損害保険協会」の会員会社21社の相談窓口を
下記に記載します。
・(社)日本損害保険協会の会員会社25社の相談窓口
会社名 | 相談窓口(TEL) | |
1 | 東京海上日動火災保険(株) | 0120-071-281 |
2 | 日新火災海上保険(株) | 0120-17-2424 |
3 | イーデザイン損害保険(株) | 0120-063-040 |
4 | 大同火災海上保険(株) | 0120-671-071 |
5 | 損害保険ジャパン日本興亜(株) | (お客様総合窓口)0120-888-089 (保険金支払い相談窓口)0120-668-292 |
6 | セゾン自動車火災保険(株) | 0120-281-389 (IP電話等から)03-3980-3572 |
7 | 日立キャピタル損害保険(株) | 0120-777-970 |
8 | そんぽ24損害保険(株) | 0120-474-024 |
9 | 三井住友海上火災保険(株) | 0120-632-277 |
10 | 三井ダイレクト損害保険(株) | 0120-312-770 |
11 | あいおいニッセイ同和損害保険(株) | (苦情など)0120-721101 (お客様からの連絡・問合せ)0120-101-101 |
12 | SBI損害保険(株) | 0800-8888-836 |
13 | au損害保険(株) | 0800-700-0600 |
14 | 富士火災海上保険(株) | 0120-246-145 |
15 | ジェイアイ傷害火災保険(株) | 0120-532-200 |
16 | アクサ損害保険(株) | 0120-449-669 |
17 | 共栄火災海上保険(株) | 0120-719-112 |
18 | ソニー損害保険(株) | 0120-101-656 |
19 | 朝日火災海上保険(株) | 0120-115-603 |
20 | セコム損害保険(株) | 0120-333-962 |
21 | 明治安田生命保険(相) | 0120-255-400 |
22 | エイチ・エス損害保険(株) | 0120-937-836 |
23 | アニコム損害保険(株) | 0800-111-1091 |
24 | アイペット損害保険(株) | 0800-919-1525 (IP電話等から)03-5653-6068 |
25 | トーア再保険(株) | 03-3253-3171 |
・(社)外国損害保険協会の会員会社21社の相談窓口
会社名 | 相談窓口(TEL) | |
1 | エース損害保険(株) | 0120-550-385 |
2 | AIU損害保険(株) | 0120-757-151 |
3 | アメリカンホーム医療・損害保険(株) | (契約関係)0120-091-051 (保険金請求関係)0120-73-5089 |
4 | アリアンツ火災海上保険(株) | 03-4588-7500 |
5 | アトラディウス信用保険 | 03-5776-7300 |
6 | カーディフ・アシュアランス・リスク・ディヴェール | 03-6415-6051 |
7 | コファスジャパン信用保険 | (保険相談)03-5402-6101 (苦情相談)03-5402-6105 |
8 | ユーラーヘルメス信用保険 | (保険相談)03-3238-2579 (苦情相談)03-3238-2563 |
9 | フェデラル・インシュアランス・カンパニー | 03-3230-7231 |
10 | ゼネラリ保険 | 0120-138-111 |
11 | HDI Global 保険 日本支店 | 03-5214-1361 |
12 | 現代海上火災保険(株) | 03-5511-6565 |
13 | ザ・ソサイエティー・オブ・ロイズ | 03-3215-5291 |
14 | ミュンヘン再保険 | (保険相談)03-5251-1066 (苦情相談)03-5251-6835 |
15 | ニューインディア保険 | 03-5326-7396 |
16 | アールジーエー・リインシュアランス・カンパニー | 03-3479-7191 |
17 | スター保険 | 03-5484-7051 |
18 | スイス・リインシュアランス・カンパニー・リミテッド | 03-3272-2877 |
19 | スイス・リー・インターナショナル・エスイー | (保険相談)03-5218-2176 (苦情相談)03-5218-2167 |
20 | トランスアトランティック・リインシュアランス・カンパニー | 03-3212-6041 |
21 | チューリッヒ保険 | 0120-860-697 |
そんぽADRセンターに連絡
(社)日本損害保険協会の会員会社25社の損害保険に加入している場合には、「そんぽADRセンター」に連絡することができます。
そんぽADRセンターは、(社)日本損害保険協会のお客さま対応窓口であり、会員会社の損害保険に関連する相談・苦情・紛争対応を行っています。
損害保険会社に対する苦情の申立てがあった場合には、損害保険会社に苦情の内容を連絡して当事者間による問題解決を促してくれます。
また、苦情対応によって問題が解決しない場合には、紛争対応として弁護士などの紛争解決委員が問題解決を支援してくれます。
そんぽADRセンターは、決して損害保険会社側の立場に立つわけではなく、金融庁からの指定を受けている中立・公正な立場であるため、安心して苦情の申立てを行うことができます。
そんぽADRセンターの連絡先は、下記のとおりです。
連絡先 | 受付の日時 |
(全国共通)0570-022808 | 月~金曜日(祝日・12/30~1/4を除く) 9:15~17:00 (手続費用は無料です。) |
(北海道)011-351-1031 | |
(東北) 022-745-1171 | |
(東京) 03-4332-5241 | |
(北陸) 076-203-8581 | |
(中部) 052-308-3081 | |
(近畿) 06-7634-2321 | |
(中国) 082-553-5201 | |
(四国) 087-883-1031 | |
(九州) 092-235-1761 | |
(沖縄) 098-993-5951 |
(社)保険オンブズマンに連絡
(社)外国損害保険協会」の会員会社21社の損害保険に加入している場合には、「(社)保険オンブズマン」に連絡することができます。
(社)外国損害保険協会の会員会社21社は、(社)保険オンブズマンと紛争解決業務に関する基本実施契約を締結しており、会員会社の損害保険に関連する相談・苦情・紛争対応を行っています。
損害保険会社に対する苦情の申立てがあった場合には、損害保険会社に苦情の内容を連絡して当事者間による問題解決を促してくれます。
また、苦情対応によって問題が解決しない場合には、紛争対応として弁護士などの紛争解決委員が問題解決を支援してくれます。
(社)保険オンブズマンは、決して損害保険会社側の立場に立つわけではなく、金融庁からの指定を受けている中立・公正な立場であるため、安心して苦情の申立てを行うことができます。
(社)保険オンブズマンの連絡先は下記のとおりです。
連絡先 |
TEL:03-5425-7963 E-mail:kujo@hoken-ombs.or.jp ホームページ:www.hoken-ombs.or.jp/ |
金融サービス利用者相談室に連絡
損害保険会社の監督官庁である金融庁では、金融サービス利用者相談室を設けおり、損害保険に関する質問・相談に応じています。
金融サービス利用者相談室では、損害保険会社に対する苦情などについて、個別案件のためにあっせん・仲裁・調停などは行ってくれませんが、問題解決のためのアドバイスや他機関の紹介などを行ってくれます。
また、監督官庁である金融庁に情報提供するということで、損害保険会社にそれなりのプレッシャーを与えることにもなります。
金融サービス利用者相談室の連絡先は下記のとおりです。
連絡先(TEL) | 受付の日時 |
0570-016811 (IP電話からは03-5251-6811) 「事前相談(予防的なガイド)」については 0570-016812 (IP電話からは03-5251-6812) | 月~金曜日(祝日を除く) 10:00~17:00 |
申立ての効果的なやり方
損害保険会社に対する苦情の申立てを行う場合には、まず、加入している損害保険会社の相談窓口に連絡することから始めましょう。
そのときに留意すべきことは、決して感情的にはならず相手に対してぞんざいな態度を取らないこと、納得いくまで説明を受けたり、こちら側の主張を論理的に粘り強く行うことです。
甘く見られないようにするために、強気な態度や乱暴な言葉遣いをする人がいますが、損害保険会社側は多くの苦情処理の対応を行っており、そのようなことで譲歩して問題が解決することはありません。
むしろ、そのような態度を取ったことにより、クレーマーであると見なされて、ブラックリストに名前が載ったりする場合があります。
損害保険会社との契約を解除するつもりならばともかくとして、今後も継続しようとする場合には、絶対に注意するようにして下さい。
損害保険会社の相談窓口に連絡しても問題が解決しない場合には、次のステップとして、そんぽADRセンター または (社)保険オンブズマンに連絡するのが良いでしょう。
そんぽADRセンターや(社)保険オンブズマンは、中立・公正な立場に立って問題解決に協力してくれます。
そして、損害保険会社に対する苦情の申立てをより効果的なものにするためには、金融サービス利用者相談室に連絡することを頭に入れておく必要があります。
個別案件に対あっせん・仲裁・調停などを行ってくれないため、金融サービス利用者相談室に連絡することは効果的ではないという見方もあります。
しかし、損害保険会社に対して苦情の申立てを行った経験者の談話を集めてみると、金融サービス利用者相談室に連絡したことが
保険契約者側とって有利に働いたケースがあることが見受けられます。
損害保険会社は、苦情を受けた場合にその処理内容も含めて金融庁に報告する義務があります。
保険契約者から金融サービス利用者相談室に情報提供が行われていると、損害保険会社にとって都合が良いことばかりを金融庁に報告するわけにはいかなくなるため、保険契約者に対して譲歩しようとする動きが出てきます。
保険業が免許制であることもあって、損害保険会社に対して金融サービス利用者相談室に連絡した旨を伝えることは、ある程度のプレッシャーを与えることになるようです。
損害保険会社との交渉が難航するような場合には、金融サービス利用者相談室を活用することが効果的であることも覚えておきましょう。
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